第52回  お母さんたちからの質問(その5)

「うちの子はまだ小さいんですが、今のうちから何をさせておいた方がいいですか?」(読解力を育てる編)

 

将来、受験で勝てる子供にするために最も必要な能力は、「読解力」です。読解力不足が原因で苦労する生徒は少なくありませんが、読解力不足は国語にとどまらず、その他のすべての教科に大きく影響します。

 例えば、算数における計算は四則演算の単純な作業に過ぎませんが、この作業がいくら得意でも、文章問題の意味を理解する読解力が無ければ、どの作業が必要かという判断ができず、結局計算もできないことになります。

 では、読解力を育てる方法とは何か。それは、幼少期からの「読み聞かせ」、そして「音読」です。読解力の乏しい生徒が音読をすると、よく言葉や文節の切れ目がおかしい読み方をします。これでは文意を正確に読み取ることなどできません。音読を正しくさせることが、読解力を養う最も基本的な訓練であり、たとえ小学6年生から始めても一定の効果は期待できます。

また、声に出して勉強する方法は暗記でも効果を発揮します。音読するという習慣は決して侮れない訓練法なのです。

 私の知り合いの保育園の先生によると、家庭で「読み聞かせ」や「音読」を余りしていない子供はすぐに分かると言います。会話能力、語彙力、相手の言葉に対する理解力、静かに聞く力、いずれも「読み聞かせ」や「音読」をしているかで大きく差がつきます。

 最近は、入社試験で音読をさせる企業もあるそうです。アナウンサーの試験ならいざ知らず、なぜ音読をさせるのか。それは、その人の読解力や語彙力、コミュニケーション能力がそれで分かるからだそうです。

 ただ、塾では一人一人に音読させる時間はありません。それに音読が苦手な子にとっては、人前で読むことは大変な苦痛になります。したがって、これは家庭でしかできない勉強法だと思って下さい。

 最後に一言。コロナ禍の中、家族で外出を自粛なさっていることでしょう。こんな時ですから、今すぐできる簡単な語彙力アップの方法も紹介します。それは、「しりとり」です。何か条件をつけてから行って下さい。例えば、二字熟語のしりとり、「学校→校長→長文→文明・・・」という具合に。すると、子供から「文明って何?」という質問をしてきます。そして辞書で一緒に調べてみる。こうして子供は新しい言葉を獲得していく。こういった何気ない家庭のやりとりが、実は子供の読解力や語彙力を育てているのです。

 がんばれ、お父さん。がんばれ、お母さん。子供への本当の教育は親にしかできません。