第48回 お母さんたちからの質問(その1)

お母さんたちからの質問(その1)

「中学受験は必要ですか?」

 良き新春をお迎えのことと、お喜び申し上げます。屋宜塾も63年目の春を迎え、

気持ちも新たに邁進していく所存です。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 さて、昨年末から始まった新年度生の募集により、様々な照会を頂くシーズンとなりました。今回は先日頂いた質問に対する私の答えを紹介します。

 

Q『中学受験』は必要ですか?

 

 この質問は年に数回あります。とても率直な質問です。ただ、我々のような塾関係者にこの質問をすれば、口を揃えてイエスと答えるでしょう。だから、こんな質問を塾にしたところで無意味かもしれません。しかし、「なぜ必要なのか」という問いの答えは、塾によって違ってくると思います。昔から「餅は餅屋」ということわざがありますが、確かに専門家に聞くのが一番の近道かもしれません。お子さんに中学受験をさせるか迷っている保護者さんは、塾にこの質問をしてみてはいかがでしょうか。どういう答えが返ってくるかを聞いた上で、塾選びをするのも1つの方法かと思います。では、私の答えを紹介します。

 

「文部科学省『平成31年度全国学力・学習状況調査』によりますと、沖縄県の中学3年生の学力は、数学・国語ともに全国ワースト1位です。皆さんのお子さんも何か手を打たなければ、こうなるかもしれません。県も学力向上に向けて努力をしてきましたが、なかなかワースト1位から抜けられない状況です。県は学力向上の特効薬として、中高一貫校の進学校である開邦中・球陽中を創設しました。このことを踏まえても、お子さんの学力を伸ばす最善の方法は中学受験だと思います。

 

 一方で、私個人は受験が人生のすべてだと思っていませんし、学力が人の幸せを保証するものだとも思っていません。ただし、学力はあってもなくても、人生みんな同じと考える人はいないでしょう。実際、学力格差が将来の収入格差に直結すると考える保護者は急増しています。だからこそ、中学受験がこれほど盛んになっているのも事実です。30年前ならば、中学受験は特別な家庭がするものでしたが、今はちがいます。中学受験をする人たちはすべて、なんとか自分の将来は有利なものにしたいと考えています。

 

 そのため、中学受験をするかしないかは、なるべく早めに保護者が決めた方がより良い教育ができます。その時、子供に相談するという方がいらっしゃいますが、私は必要ないと思います。当たり前のことですが、子供は自分の将来に何の責任も負えません。子供の将来に責任を負うのは、親の仕事です。ならば、家庭の重大事については、親がその決定権を持つべきです。

 

 さらに、中学受験は高校受験よりも相当厳しいという現実も認識しておく必要があるでしょう。たとえば、開邦中・球陽中の募集は各80名に対して、開邦高は160名(学術探究科)、球陽高は240名(理数科・国際英語科計)と、募集人員は中学校の方がはるかに少ないのです。

 

 中学受験をするなら、合格を第一目標とし、習い事も遊びも受験中心に計画を立てる必要があります。習い事や遊びのついでに受験する人が、合格できるほど甘くありません。中学受験は小学生にとって、子供らしい理想的な姿とは言えないものですが、それでも覚悟を決めて臨むならば、お子さんの将来は確実に有利なものになることでしょう。」